憧れのキューバ


自称「たびじん」である。 どこまで行けば気がすむのか、時々真剣に考える。 そして2012年夏10年越しの念願が叶った。 キューバへの旅である。 どうしてそこまでと思うかもしれないが、アメリカ好きの自分にとってどうしても避けて通れない国であった。 「昔」のアメリカを色濃く残す、社会主義国はいったいどんなところなのか想像もつかなかった。 知っているのは、ヘミングウェイが愛した国、世界に誇るラム酒と葉巻。野球の強い国。日差しが強くマイアミまで近くて遠い国などというところだろうか。 ハワイからは、思った以上に遠い国であった。 ホノルル空港を夜発ちシカゴに着く。予定の飛行機は、ホノルルからの飛行機が遅れた為すでに跡形もなかった。 それから待つこと4時間半やっとカナダのトロント行きの飛行機に乗ることが出来た。 トロントでの乗り継ぎの時間があまりなく、入国審査やチェックインを済ませるとキューバのハバナ行きの搭乗開始に近くなっていた。 日本やホノルル空港と比べると、インフォメーションが極端に少なく、何番ゲートで何時から搭乗始まるなどのほとんどない。 「こういう」扱いをされていないので、極度の不安になる。 それはそうと、簡単に社会主義国に入国出来るのか?そっちの方も不安となった。 ホノルルからシカゴまで8時間、シカゴからカナダのトロントまで1時間半、そしてトロントからキューバのハバナまで3時間半、長い長いフライトも終わりとなった。ハバナのターミナルに降りると、見える全てのものが暗く感じる。 節電か電力不足かわからないがとにかく暗い。 おまけに未だ照明は蛍光灯で、ついたり消えたりのものもあった。 日本のパスポートの人は日本で契約した海外旅行保険が必要とのことだったが、何のことはない機内でツーリストカードのみを記入だけであとは必要なし。 実にシンプルな感じだ。 やはり夜知らない国、まして社会主義国に着くのはかなり不安である。 到着ロビーを出ると辺りは賑わっているが、待っているはずの旅行会社の人間が見つからない。 右往左往15分くらいすると、人懐っこい感じのキューバ人が僕の名前を書いたカードを持って近くに寄ってきた。 確認すると、ホテルもちゃんと合っていた。 自家用車みたいな旅行会社の車で、空港をあとにする。 しかし相変わらず辺りは真っ暗。これも不安になる。 25分ほどで、巨大なホテルに到着した。見た目は先進国のそれと変わらない。 チェックインもスムーズに出来、乗り継ぎを入れて20時間の旅が終わった。 ハワイからは夜便だったのであまり眠れず、ハワイ時間を考えると時差ボケになるので、シャワーを浴びて速攻寝た。 約7時間ぐっすり眠れた。カーテンを開けると空が白白としてきた。 ふと街を見ると、何とご来光の時間であった。 線香花火のような小ささから、水野晴郎の水曜ロードショーみたいな太陽が登っていった。ちと古いか。 長旅の疲れもぶっ飛ぶようなご来光で、何か幸運がやってきたみたいだった。 人間勝手なもので、さて急に腹が減ったと朝食会場に向かう。 このツアーは、エアーカナダによるパッケージで飛行機、ホテル、空港とホテルの送迎、そして朝の朝食バイキングも付いていたのであった。 社会主義国でこんな見事なバイキングを食ってもいいのか?などと考えながらもオムレツを頬張っていた。 10年越しの恋していたハバナだ。 旧市街を徹底的に散策するのが、今回の目的。 このホテルよほど良いホテルなのか、デイリーで6回も旧市街行きの無料シャトルバスが出ている。 10時半のバスで旧市街に向かった。ハワイでも海は見慣れているが、メキシコ湾の海はまた何か違う感じがする。 日本と太平洋が違うのと同じような感じか。 海沿いの道はカリブ海というより、熱海近辺をドライブしているのに似ている。 もちろん建物、キューバ国旗などでハバナは一目瞭然であるが、海沿いだけを見ると、40年前の熱海という表現が当て嵌まるようだ。 さてバスを降りるともうそこは街中が世界遺産。 色とりどりの建物と古色蒼然としたアメリカ車の往来。 夢にまで見た、アメリカ最高の時の車が60年の時を経ても、何の問題もなく走っている。 バブル時代の原宿、渋谷あたりでしか、お目にかかれなかった往年の名車たちである。 軽々と熱海なぞと表現した自分を恥じねばならぬ。それくらいに異国情緒が漂う。 道行く人は陽気。街の匂いは埃っぽい気がする。ここでも匂いだけとったらタイのBangkokに近い印象を受けた。何かと、「どこぞ」と比較するのが、典型的な日本人である。 さてもうひとつ今回は普段あまりしないことをやってみようと思った。 まずはラム酒を飲むこと。 ヘミングウェイが毎日通ったという「LA BODEGUITA DEL MEDIO」でモヒートを「FLORIDITA」でダイキリを飲んだ。 どちらも旨いには旨いのだが僕の好みとしては断然ダイキリだ。 ヘミングウェイが粉雪のようで飲めば飲むほど心地良くなると云った有名なものである。 本当にあまりアルコールの味がしなく最後の一滴までほんのり甘い感じがした。 これは正に絶品である。2日連続で行った。 あとは千鳥足で、ふらふらふらと街を散策するだけである。 ほぼ3日間同じような行動をした。こんなに写真を撮りたくなったのは、人生初の海外旅行であったホノルル以来である。 ホテルに帰ると急に腹が減り、レストランに行った。 アメリカンスタイルの店だったので、はずれがなさそうなチーズバーガーを注文した。これがまたいけるはいけるは、かなりでかいにも関わらずぺろっと平らげた。 物価はアメリカ本土、ハワイとほとんど変わらない。 インターネット環境は悪く、3日で2時間ほど使用した。 着いた日に「無料のWIFIはありますか?」と聞いたら「キューバには無料はありません」ときっぱり云われた。 ここ数年3日で2時間のインターネット環境はなかった。 でもそんなもんでいいような気がしてきた。 24時間繋ぎっぱなしの先進国より健康的だと思う。 便利になり何かを失った先進国と、便利はないがまだまだ豊かな生活がある社会主義国。どっちが幸せなんだろうと、考えさせられてしまった。 この国は教育費、医療費全て国が負担。定期的にお金が支給されそれで生活する。 大金持ちいないが貧民もいない。 明日の生活に不安を感じることもない。 先進国より社会主義国は劣るだろうと昔は思っていたが、今は素晴らしい国だと本当に思う。 そんなむずかしいことはどうでも良く、腹も一杯になったのでもうひとつやりたかった葉巻を買いにいった。ホテル内にシガーショップがあった。 カッター、ライター、葉巻のセットを購入し、海の見えるラナイでヘミングウェイを真似て煙を出した。 これがまたいい味でラム酒、シガーと地のものを体験出来る喜びに浸った。 海に落ちる夕日はハワイ同様、ダイナミックに暮れていく。 空港で25ペソの空港使用料を取られた。 出国手続きを済ませゲート付近に行くと免税店があった。 ここではコーヒーとキューバのCDを購入した。 煙草や酒など豊富な品揃えだ。何のことはないここで全て用が足りたみたいである。 街でほとんど見当たらなかった、コーヒーをショップで注文した。 先進国のそれと同じ味。出国を済ませたのでそこには「違う国」が存在していた。 この国は人々は親切で明るく、僕の旅も人生に中で1番といって良いほど素晴らしいものとなった。 そして今回ほのぼのした光景を目にした。 地元の12歳くらいの少年に僕と同じシャトルバスに乗っていた小母さんがアメリカのドルにして8ドルをあげた。 少年はすぐ様走りだし、消えた。5分後に嬉しそうに本格的なサッカーボールを 手にしていた。はにかんだ少年は小母さんに向かってグラシアスと云った。 小母さんは大事にするのよとでも云ったのか。 今回の旅で1番印象に残った出来事であった。 次回来る機会があれば、サンティアゴとパラデロにも行ってみたい。 グラシアス。

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